ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

塩川伊一郎評伝

三塩川缶詰合名会社の発展父を失った勝太は、二代目伊一郎を襲名した。父とともにりんごや桃の苗づくりから種類えらびといった技術的な研究と工夫を続けながら苦労を続けてきたが、親子で考えて力を合わせることによりなんとか解決してきた。しかしこれからは一人の力でふりかかる苦難をのり越えていかなければならない。父をみおくった二代目伊一郎は、自分をいましめながら缶詰製造に力を入れた。明治四十二年に書いた『缶詰製造業経営書』を要約しながらまとめてみると、桃の処理缶詰にする桃は、まさに熟さんとする三日前に採った果実を溝にそって庖丁で二つに切り、皮をむいて核をはなし、それを水に浸して酸化を防ぐ。この原料をふっとうする釜の中で五分程煮るとやわらかくなって浮き上がってくるのですくい上げて冷水に浸す。糖液の調整上等の「ザラメ」一〇貫匁に清水一斗八升の割合に混ぜて煮沸してとかし、これを充分に冷して使う。肉詰冷した原料の桃を水きりし、きれいに洗った缶に約百匁を詰め、冷した糖蜜三五匁を注ぎ、ふ