ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
連合共進会に於て、二等賞銀牌を授與せられて、錦上更に花を添ふるの榮譽を擔ひしや。鳴呼君が園芸の奨励及び改良上の功績、洵に此の如し。故を以て明治四十二年四月、大日本農会總栽伏見宮殿下より、名譽賞状を下賜せられたり。亦幸榮の極なり。聞く君の缶詰は、現今到る處顧客の称賛を博し、啻に内国製を凌駕するのみならず、外国製をも圧倒せんとする勢なりと。而も君尚ほ之に満足せず、将来益々該事業を拡張し最も果樹に適する我が信州をして、一大果樹国たらしめ、更に越後其の他の近縣に向って発展を試み、以て盛に諸外国に輸出し、一方には外国製の輸入を防遇し、他方には生糸に亜くべき一大産物たらしめ、以て国富を啓発するの希望なりと言ふ。其の志望の大にして其の等盡の壮なる實に斯の如し。人の称して園芸王と曰ふ、溢言にあらざるなり。陶堂子日く、予、君の園林を想ふ毎に、未だ嘗て武陵桃源を連想せずんばあらず。而も彼等は奏の乱を避けて此の境を開き、以て桃花園を作りしに過ぎず。豈毫も国家の消長に関係あらんや。今君の營む所は其の意全く此に異なり。聖世の思風に浴して、茲に一大園林を開き以て其の裏に起臥し而して其の果實を天下に頒ち、人をして普く其の甘味に舌を皷せしむるのみならず、依りて以て地方の富源を開き、一国の財源を作らんとするにありき。豈武陵桃源の毫も家国民人に要なきもの、比ならんや、而も其の花時に際して、万朶斉しく春風に笑ひ、芳華鮮艶落英繽紛、蝶蜂相逐ひ、難犬相聞ゆ。而して父子婢僕、此の境に處し怡然として相楽む所は、又雅より武陵桃源なり、而して一たび結實の期至り、團々たる万顆が悉く其の〓顔酔瞼を呈するに當りては、眞に黄金郷を現出す、是れ豈腰纒十万鶴に乗して楊州に遊