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概要

塩川伊一郎評伝

草イチゴ草イチゴは、初夏百果の末だ熟せざるに先だち、已に累々として美色を呈し、味は甘酸宜しきに適し、一種愛好すべき佳香を有し、生食し或はジャムとして頗る美味なるを以て、近来其の需用非常に激増し来り、東京、横浜の如きは一斤二十銭以上の價を保ち、我が地方に於てもイチゴジャム製造盛大となりたる結果、一貫目金三十五銭以上の時價を保つも、尚各製造家争ふて購買するに至れり。草イチゴは種類を撰定し栽培宜しきを得ば、一坪一貫五百目の結実をなさしむるは敢て難きに非るなり。仮令其大栽培をなすも尚一反歩三百貫の収穫を得べきなり、草イチゴの種類は数百種ありて、弊場に於ても数十種を一々実験し、其最豊産なる種類十有余種を撰出せり、今更に其五種を紹介す可し。一、ルサー一株金五銭百株金三円果実最大、先端尖り色は紅色にして種子少く甘味にして香気高し、一粒四五匁ありて優等種なり。二、ビルモラン一株金五厘百株二十五銭早生種にして果実中等なり、色は濃赤色、酸味多し製造用に適す。三、エキゼルショール一株金五銭百株金三円果実最大早生種なり、弊園にては五月下旬に成熟す。温室栽培に適し、秋季より開花す。先端円錐状をなし、紅色にして実緊りよし。輸送販売に適す、豊産にして強健虫害に罹ることなし。四、ドクトルモーレル一株金五厘百株十五銭晩生種にして、果実最大円形をなし、甘味多し、生食用として需要多し。