ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
す可し。四、果実は、特約の便法を設け、最高價を以て全部を購売すべし、弊場の缶詰は、東京・横浜・大阪其の他大市場の商店に取引を有し、今や進んで海外に販路を拡張しつゝあり。製造は機械力を用ひ、一日一千貫以上の生果を使用するの設備あり。故に他社の如く推積して腐敗せしめ、荷主の損害を招かしむるが如き憂なし、殊に機械力を以て工費を削減し得るを以て、最高價に原料を購入す可し。五、余が〓皮器の発明は、缶詰製造界の大発展にして又洋桃栽培上の一大福音たりしなり。若し旧来の手〓法に依るとせば、工女一日一人にて、漸く五・六貫匁を〓皮するに止る、故に一日一万個の缶詰を製造するとせば、少くとも工女五百人を使用せざる可からず、即ち製造期間を二十五日としても、二十五万個の製造をなすに過ぎず、而かも五百人の工女を短期間に雇使せんとする、豈に容易の事ならんや。如ふるに使用原料、僅かに五万貫に過ぎず斯くの如くにして如何で益々桃園を増殖し、無限に缶詰の製造を繁営せしむるを得可き、洋桃栽培者の頭上に迫れる危険の趨勢は、有識の士の愁眉を開らく能はざる処たりしなり。然るに余が発明はこの危険を除きたるものなり。余が新発明の機械に依る時は、工女一人一日間に三十貫より四十貫を〓皮し、核抜器は二百貫以上を核抜す。故に一日一万個を製造するには、一日百人の工女を使用するに過ぎず。若し五百人を雇用する時は、五万個を製造し、二十五日間には一日二十五万個を製すべく、之を原料に改算する時は、生果二十五万貫の多量を使用し得可し。斯くして新機械の発明に伴ふ缶詰界の大発展は、生果の需要を激増せしめ、販路を拡張し、併せて国産の一たらしむを得たり。