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概要

塩川伊一郎評伝

術法なからんや。然るに其技術を習はず、其の栽培法をも知らずして、盲目的培養を爲すが故に、截断すべき枝葉は截断せず、截断す可からざる枝葉を截断し、間摘すべき果実を存して、間摘すべからざる果実を截摘し、樹を害し果を失ふに至る。是れ其の三なり。成熟期節に限りある桃果の大栽培に従事する者は、小売のみを以て販売し盡すこと容易に非ず、若両三日の雨天に逢はば、忽ち販路に窮し、従しく地上に落下せしむるの損害を蒙ることなしといふ可からず。専門の商家猶販路の難きを唱ふ。況んや多事なる農家に於てをや。是れ其の四なり。斯く数い来れば洋桃栽培の危険失敗亦恐る可きものに非ずや。洋桃栽培の危険多きは、前述の如しと雖も、又非常に利益ある事業なることは、一般の確認する処なり。然らば如何にして其の危険を避けて利益のみを収め得可きか。是の問題に明確なる解答を與ふる者は即ち弊園なり。一、土質の鑑定は、二十有余年間の実験に基き、鑑察の明確なる殆と人力以上にあり。之の鑑察力に加ふるに、無限の責任を以て依頼者の需めに応じ、土質の適不適を鑑定す可し。二、洋桃の種苗は、洋種数十種中より撰出したる良種にして、八年間病害虫霜害等に罹る事無く、豊産なる結実を継続し、樹勢益々強健、一反歩一千貴以上の収穫ある良種を自ら接木したるものなり。斯くの如き精撰権保証を付して、以て販売す可し。三、栽培法は、果樹剪截法の原則に則り、洗截法、樹頭剪截法、繁技法、主枝□ 截法、整技法、誘曲法、果実減除法、果実増大法等の各法を習得して大に得る処あり、加ふるに自家独得発明の断技術を教授