ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
ル温暖トナリ、岡山地方ニ比スベクモアラザレ共、横浜地方ト大差ナキヲ見ル、加フルニ湿気雨量ニ於テハ岡山県ニ比シ遙カニ少ナク、且其雲量モ常ニ少ナク日光ノ直射多キハ其湿度不足ノ悪結果ヲ幾分交互補供スルコトヲ得ベキガ如シ。只同地方ニ及バサルハ春暖ノ来ル稍々遅キト、殊ニ秋冷ノ来ルコト甚タ早キカ爲メニ、晩熟種ノ栽培利益アラザルニアリ。然レモ之ヲ関東地方供給地タル川崎地方ニ比スレバ土質ニ於テ気候ニ於テ甚タ適切ナルヲ見ル。此故ニ砧木ノ選定ト剪定整枝法等ニ種々ノ差異ヲ来スヲ見ル其最モ著シキ類例ヲ舉クレハ、砧木当地方創業当時ニ於テハ、斯業ノ経験乏シキ結果其苗木ヲ求ルヤ、単ニ種苗商ニ任シテ顧ミザリキ。然ルニ当時川崎地方ニ於テハ到底実生砧洋桃ノ徒ラニ繁茂成長シテ結果容易ナラス。即チ欧米ノ学説実験ニ基キ此ノ如キ肥沃多湿ノ土壤ニハ李砧ノ選ム可キヲ知リ、桃苗ト云ハバ川崎向ナリシ際ナリシ爲メニヤ、本園購入ノモノ又多ク李砧ナリキ。然ルニ当地方ノ土質ハ前述ノ如ク砂壤土ニシテ下層ハ礫質ニシテ其層頗ル深ク排水甚タ可良ナリシカバ、李砧ノ桃苗ハ成長極メテ遅緩ニシテ、且ツ病虫害多ク当初数年良果ヲ結ビタルノミニシテ。他ノ実生砧ノ成長ニ比ス可クモアラズ。剪定整枝ハ甚タ簡単ニシテ多ク盃状ノ短幹仕立ナリト雖モ、敢テ短矮ナル障壁誘引ノ如キモノニアラズ。即チ其高キハ六尺乃至八尺二及ブモ可成摘果ニ便ナルヲ度トスルノミ。而シテ剪定ノ如キモ他地方ノ如ク甚シク短縮スルトキハ翌年ハ全ク開花ヲ見ザルノ悲境ニ陥リ。創業当時ニ於テハ専ラ欧米ノ著書或ハ川崎地方ニ習テナスノミナリシガ、多年ノ経験ハ自ラ其適度ヲ発見シ得ルニ至レリ此レ土地乾燥ニシテ気候モ亦乾燥ナルニ、快晴日数多ク雲量少ナク日光ノ直射多ク、従テ樹勢ノ成長ハ常ニ適