ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
栽培ノ実況ニ明カナルヲ知リ、同氏ニ就キテ我ガ風土ニ適スル果樹ノ指導ヲ乞ヒシニ、親シク風土ヲ調査シ米国種桃樹ノ有利ナル可キヲ指示セラレタルヲ以テ、直ニ東京赤坂興農園ヨリ数十種ノ洋桃種苗ヲ取リ寄セ桃園ヲ開キ各種ヲ試験セリ。或ルモノハ良好ノ結実ヲ爲シタルモ、尚ホ樹勢萎縮シ其外ノモノハ皆数年ナラスシテ枯死シ、或ハ害虫ノ蝕害する処トナレリ。其原因ハ李砧苗木ノ高燥ナル我風土ニ適セザルニ因レリ。是レヨリ野性桃砧木ヲ選ミ前ニ選出シタル良種ヲ接木シ益々増殖ヲ謀レリ。選出種中「アーリーリバー」系ノ一種ノ如キハ樹勢強健ニシテ一株ニシテ二十貫以上ノ結実ヲナセリ。現今浅間水蜜桃ト称スルモノ之ナリ。是ヲ以テ洋桃栽培ハ此地方瘠地ニ適シテ多大ノ産額アルモノナルコトヲ認メ、此ノ良種ヲ繁殖シテ自己ノ桃園ヲ設立シ、又同志ヲ勧誘シテ大ニ栽培普及を謀レリ。洋桃栽培普及ノ方法トシテ、桃樹ノ結実後收利ノ暁ニ種苗代金ヲ支弁スル約束ニテ苗木ヲ売却シ、或ハ自ラ発起者トナリテ組合組織ノ桃園ヲ仕立テ、或ハ苗木ヲ寄贈スル等大ニ尽力シタルノ結果、小諸町信桃社、小沼村ノ東洋社、南大井村ノ甘桃社、栽桃社、大里村ノ大里桃園其他岩村田町北大井村等ニ各組合ノ桃園設立セラルルニ至レリ。各個人モ亦桃園ヲ仕立ツルモノ続出シ、将ニ二百有余町歩ノ桃園ヲ見ルニ至レリ。而シテ其内自己ノ所有桃園ハ五町歩組合ニ加入シタル自己ノ所有部分六町歩ヲ積算スルニ至レリ。創業当初ハ其目的専ラ生果販売ニアリシモ、長野県下ノ都会等ニテハ未ダ洋桃風味ノ嗜好ヲ知ラズ、到底其買客ニアラザリシヲ以テ軽井沢ノ外客ヲ以テ唯一ノ買客トセシモ亦外客ノ需用ニ限リアリ。依テ明