ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
ガ我モ大ニ立腹セルガ如何トモ致シカタナシ、去リテ半里余ヲ行キ或ル露店メキタル處ノ戸ヲ引テ食ヲ求メタリ、今日ハ晝飯ハ飯団子四串ニテ凌ギシコトトテ腹飢へ足痛シ、歩シカタケレバ此ノ露店ヲ問シガ出張ノコトトテウリキレタトテ断ル、余ハ何ナリトモ飢タレバ與ヘヨト言ヘケレバ粥ヲ與ヘタリ、然レ共懐中勘定モアレバ多ク食スルコトモ得ズ、僅ニニ椀ヲ喫シ汁ニワン吸ヒタリ、ヨリテ考フルニ是ヨリ五里モアル福島ニ行ントテ宿セシムル處アルニモ非ズ、悲シサ言ハン方ナカリシ、苦シサニ主人ニ腰掛ニ眠ルコトヲ許サレンコトヲ乞フ、主人憐ミテ然ラハ眠ラレヨ、布団アラバ借スベケレ共我々トテモナシ、火ヲ焚キヤルベケレバ炉バタニテ眠ラレヨト薪ヲ焚キ與ヘタリ叺ヲ敷物ニ借シタリ叺ヲ敷キ布トンナク寒夜ニ土上ニ眠ルコトヲ許サレシガ情ナリトハ何ト情ナキコトナラズヤ、教ノママニ叺ノ上二眠リシガ眠リナリガタク夢シバく覚ム、夜半過ヨリ寒威處々ニ透リテ眠ラレヌ、起テ火ヲ焚キテ眠ル、甚ダ暖キニ驚キサメテ見レバ羽織ハ半焼キ衣ニ移ラントス、アワテ・消シ又少シク眠ル間ニ夜ハ明タリ。三月三日三日ト四日ノ順序前後ス、天気此ノ辺ハ山ナリ何ノ奇モナク何ノ景モナシ、石ヲ水車デ撞ク處アリ、瀬戸焼ノ材料ナリト言フ、午後四時頃御岳ト富士ヲ望ミシ好日ナリ晩中津ニ宿ス三月五日天気薄暗キニ起出ツレバ道路モ屋上モ厳霜ニ凍リ、寒気膚ニ透ル焚火ヲ盛ニシ冷果テシ身ヲ暖メツヽ見レバ、羽織ハ下方黒ク焼ケ再ビ着ルベカラズ。昨夜ノ餘ノ粥及ビ汁ヲ喫シ朝寒風ニ身ヲ吹カセツツ行路ニ就ク。霜柱ハ跣足ニ碎カレテ、サクリくト音ヲナシ凍痛甚シ、蓋シ足袋モ穿カズ草鞋モ破レタレバナ