ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
セルナリ。キソ川の水勢激スル中央ニ奇巌高ク立ル頂ニ社祠アル。風景甚好シ、午后八時頃御岳宿ニ泊ス、此ノ宿ハ少シ善キ方ナリ、三月四日夜中雨、朝天気午前六時三十分宿ヲ発ス寒サ甚シ見レバ夜前ノ雨山上ハ雪トナリテ白シ路泥濘。梅白ク寒梅ナラン小学ノ児童ハ口々吾人ノ勇武ヲ談シツツ学校ニ通フハ愛ラシ。馬籠ノ駅ヲ超ユ峻坂ナリ、坂上ヨリ山下ヲ望メハ小山波ノ如ク起状シ登坂ノ苦ヲ忘ル、馬籠宿駅ニ郵便局アリ、妻籠ヲ超へ所謂木曽山道ナリ馬籠峠ハ登リ又下ルコト二回甚ダ峻坂ナリ。下リ下テ美濃ノ長嶋大井町ニ出ス、中津ニ下ラントスル處富岳群山ヲ圧シテ白扇倒影天辺ニ懸ル。東方ヲ望メバ御岳天際ニ聳ヘテ白皚々タリ明後日ハ斯クモ遥ニ見ル御岳ノ山麓ヲ過クルカト思ヘバ足歩ノ一歩一歩ヲ運ブモ積レハ大ナルモノナリト感嘆セリ、足痛甚シク歩行甚ダ難ム汽車上ニアリテ古入ノ旅行ノ苦ヲ語ルヲ笑ンカ今ニシテ眞ナルヲ知ル。是ヨリ木曽川沿岸ヲ上リ行クナリ、木曽川ノ流勢急ニシテドウく白玉ヲ飛シ石ヲ噛ム石磨セラレテ白ク円ナリ檜林ハ峻山ニ茂生セリ行ク處トシテ険山ナラサルハナク過ル處深谷ナラザルハナシ。古イ路峻ナリシガ今ハ新道開キ馬車通行セリ。須原ニ至リ宿セント欲シ宿ヲ求ムレトモアラス、我ガ風体怪シケレバナリ木曽山中ノ□ 中ヲ裸足ニテ行李ヲ肩ケ行ク様吾ヨリ見ルモ怪シケレバ人ハサゾカシ怪シク思ヒケン、皆宿ヲ断ル、木賃ヲ求メテ在ラザル故、二日ノ宿料ヲ一日ニ費スモ斯ル寒山ニ露宿モナリガタケレバ後ニハ如何ニ苦シムモ屋中ニ臥サント決心シテノ上ナリ、然レ共余ヲ宿セシメザレバ止ムヲ得ズ忽チニ至ル、又同ジ或ル家ノ如キ断テシマヰサモ穢ラハシサウニ言声ヲ強クシテ言ヘルニハサス