ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
三月二日汽車ニ乗シテ岐阜ニ向フ。車窓ヨリ望メバ岩脇村ノ近辺ノ小山ハ雨ニテ雪解ケ、細流滝ヲナセリ。是ノ雪ニヨリテ気候ヲ考フルニ、江州ハ甚ダ寒キ如ク思ル小山ノ頂キニ雪ノアル如キハ□ □過セル国々ニテハ見タルコトナケレバナリ、寒梅開ク。関ケ原ハ伊吹ケ岳高ク聳へ山脈他ノ小山ニ連ル、小山ハ原ノ西北辺ニ群起ス、山麓ハ遠ク大垣岐阜ニ連リ、目ノ達ス所一面平地ナリ、斯ル平野ヲ望ミテハ大洋ノ広漠ニ目ノ慣レシ余モ驚ヲ喫セリ、昔関ケ原ノ大戦ハ胆吹ノ須走トカ称スルノ地ニテ戦ハレシト言フ、東西ノ軍旌旗ヲ翻シ平野ニ百萬ノ軍ヲ交ヘシハ如何ニ壮観ナリケン、大垣ハ昨日ノ大雨ノ為ニ出水シテ田野道路モ水ニ没セリ、然レ共深カラズ麦・油菜ノ僅ニ没セシノミ、大垣辺ノ田野ハ低ク平ラニシテ河流ハ田野ヨリ高シ、一日二夜ノ位ノ雨サヘカヽレバ連日ノ大雨ニ遇ハバ如何ン、堤防破壊セバ如何。岐阜県ノ大洪水ヲ屡々耳ニセシカ、今實験シテ其ノ然ルヲ知リシ。家屋敷マデ田野ヨリ二尺程モ高キニ過ズ。河流ハ濁流滔々トシテ流レタリ、然レ共水勢弱シ。濁流ハ粘土ノ山上ヨリ流下セルモノナレバ、此地肥沃ナル湧因ナリ。岐阜ハ縣聴ノ處在地ナレバ、頻ル大市ナリ。岐阜ハ気候米原ヨリ大ニ暖シ、桜ノ花咲キ麦モ大ニ生成長セリ。新加納ヲへテ漸ク山間ニ入ル。女子織物ヲナスモノ多シ。鵜沼ニハ九原アリ、一面平坦ニシテ、大凡百町歩程モアランカ。地味宣シカラズ。御料官林アリ。酒倉山林ヲ過グ、鹿多シト見へ、問屋前ニ二十頭程アリタリ、此ノ辺ハ小山群起シテ松林ナリ。木曽川ノ激流ハ滔々トシテ流ル、河岸ノ風景大ニヨシ、奇巌怪松趣ヲナス。出水ノ為ニ大田ノ渡シ渡船絶ユ、止ムヲ得ズ兼山ヲ回ル、二里余ノ徒労ナリ。兼山ハ山山ニシテハ良キ町ナリ、良キ商家アリ。木曽川ニ架セル兼山橋アリ、水面ヨリ甚高シ巌ヨリ巌ニ架