ブックタイトル塩川伊一郎評伝
- ページ
- 224/332
このページは 塩川伊一郎評伝 の電子ブックに掲載されている224ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 塩川伊一郎評伝 の電子ブックに掲載されている224ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
塩川伊一郎評伝
テ三、四ケ村アリ、此ノ地ニテハ戸毎ニ眞綿ヲ製スアリ、雇レンカヲ求ムレトモ断ル、下宿ヨリ通フ故ニ教授セラレンコトヲ求ムレ共、本年ハ原料乏シケレバ業モ近日ニ切上ル故二教授ナリ難シト。江州マ綿ノ原料ハ重ニ九州ヨリ来ルト、長野県モノハ来ラスト言フ。眞綿ハ十メ目百七十円ヨリ八十円マデ上等、同ジク百四十円ヨリ五十円マデ中等ナリ、中等ハ九州辺ノ上等ナランカ。信州スカラハ絹糸紡績ニハ不向ナリト言フ、信ズベカラズ、上等ハ重ニ絹糸紡績ニ使用スルヲ以テ格外ニ高シト言フ、マ綿ハ色澤白シ、上等ハ断力アリ、中々ナメラカナリ。菓□ ハ一人マ綿百目位ナリト言フ。余ガ目的ハ此ノ地ニアリテ、暫ク滞在スルニアリシガ、意ノ如クナラザルヲ以テ忽チ路頭ニ迷フ身トナリタリ。雨ハ粛々トシテ降来リシヲ以テ蓋ナク雨衣ナキ身ハシボ濡トナリシ。是ヨリハ野ニ伏シ山ニ伏し行歩、百里道ヲ行カント大決心ヲナシ蓋及ヒ着畳表ヲ買求メ下駄モ切レタレバ、跣足トナリ停車場ノ構内ニ入ル悲シカナ、悪シキ時ニハ此處通セズ、戻リテ道ヲ求メテ出入歩スルコト二十町聞ケバ彦根街道ニシテ中仙道ハ反対ノ方向ナリト言フ、初メヨリ野伏シ山ニ伏サント決心セル余モ、茲ニ至リテハ進退極リシ、時ニ午后五時ナリ、アヽ失敗、アヽ恐シカラズヤ、一厘ノ貯ナケレバ如何トモシカタシ、左レ共雨ニ如何トモシガタケレバ木賃宿ヲ求メテ宿ス、宿人十人アリ、靴修理様者、巡礼アラメノ如キ衣ヲ着セル同宿人ナリ、飯五合ヲ炊キテ貰フ、蔬ハ泥鮒及ビ宿料金十一銭五厘ナリ。零落シタルモ布団ノ汚キニハ閉口セリ、天気ナラバ野ノ新鮮ナル空気ヲ呼吸スルノ快ナルモ如何セン雨天ナルヲ三月一日大雨連日袷単衣股引、筒袖四品一円三十銭デ売却ス雑諸六銭ニ拂フ、水□ ハ米原産物ナリト。眞綿ハ彦根井口上川等ニ製造處多シト、但シ機械掛ニ非ス。名ニ負フ江州ノコトトテ人情軽薄ナ