ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
フ、上等弐円、中等壱円七十銭、下等壱円五十銭ナリ。絹糸紡績ナル者アリ、紿糸ノ染タルモノ是ナリ、十匁七十五銭、六十五銭ナリ。島□ 糸ヲ問ヘトモナシ、絹糸紡績ハ綛合セタル如ク思ル、手紬ノ如キモノハ見当ラス、大阪ニハ絹糸紡績所アリ、岡村尤モ盛ナリト。大阪、神戸ノ間車窓ヨリ望メバ畑ニハ大根植ル多シ、菜種ヲ採集スルナリト言フ、今植ル者モアリ、蒔物ナシツヽアル處多シ。梅花椿到ル處ニ咲ケリ、咲キ方ハ三分ノ一程ナラン。處々ヲ馳回リ終リニ道頓堀ニ到ル、賑シコト甚シ肩摩轂撃トハ此ノコトナラン。観物、芝居其ノ数ヲ知ラズ、茲ニ旅篭二十五銭、片旅篭十五銭ト記シアリ。飯ヲ食シ魚類ヲ食ス、二日余モ食セザルコトナレバ美味忘ル可カラズ、嚢中空シキコトヲ忘レテ、十銭余ヲ食シ後悔セン、今日ハ神戸ノ晝飯ト共ニ三十銭モ費セシ故ニ宿泊スル能ザル様ニナレリ、故ニ今夜ハ野ト決セリ、夜中處々ヲ遍歴ス、婚姻アリ〓笥三棹長持二棹是袋ヲ懸ケ、長持一棹ニハ白桐ノマ、續キテ台二ツリヲ並ヘテ憺キ行ケリ。供モ仲人モ行ヌ、只此ノ荷物ノミナリ、家ハ直チニ戸ヲ閉セリ、何ナル風ナルヤ知ルヲ得ズ、只頗ル大家ナルヲ知ルノミ、歩行モ頗ル悩メトモ何ニ宿ス可キヤヲ知ラズ、ウカくト歩シテ材木積シ處ニ到ル、此處二宿センカト思シガサスガニ恐レテ宿セズ、野露ニ曝サル、モ公園ノ寝台上ニ宿センカト思シガ忘レタルヲ如何セン、又歩シテ行ケバ何神社ナルヤ縁日ナリ、人群集スルコト甚シ、社殿ニ詣シテ回視スレバ好地アリ、然共何時詣人ノ絶スルヤ知ラス、去テ心斎橋ニ出テ見レバ一野店アリ、是屈竟ト縁台ヲ引テ風ト月光ヲ覆へ、茲ニツグミシ膝ヲ屈スルノミ坐スルコトナラズ、敷物無レバナリ、斯クシテ夜半ニ到、夢驚キ一時モ寝リ難シ、前二石碑アリ、木村長門ノ守重成ノ誠忠ヲ表スト大ニ石ニ記セリ、明月ハ天心ニスミ渡リ晝ノ如シ、而シテ我ハ流離シテ宿スルノ資無ク