ブックタイトル塩川伊一郎評伝
- ページ
- 221/332
このページは 塩川伊一郎評伝 の電子ブックに掲載されている221ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 塩川伊一郎評伝 の電子ブックに掲載されている221ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
塩川伊一郎評伝
ニシテ何處ノ国ニ至ルモ人ノ情ハ同シキモノナリ。二十三日ノ夜船ニ乗リシトキョリ大島ノ一青年アリ、大阪ニ行ク者ト談ズ、彼親切二余二布団ノ半ヲ與フ、是ガ為ニ大ニ先患ヲ減ズルヲ得タリ。両岸ノ山々画クガ如シ、夜安眠ス。二月二十六日天気晴朗午前七時頃播磨湾ニ入、甲板上ニ出テ望メバ四国ノ島青螺ノ如シ、一方ハ播磨ノ浦々名工ノ〓ノ如シ。青松白砂ノ間楼閣隠見ス、高砂須磨明石舞子ノ名所ヲ船上ヨリ眺メタリ。一ノ谷ハ高唆ナル山岳ヲ後ニ負ヒ前ニ深キ海水ヲ扣ユ、是鉄拐山ト播磨灘ナリ。義経ノ戦略平氏ノ苦戦ノ古昔ヲ忍ブレバ轉タ感慨ニ堪ザリキ。今日文明ノ汽船ノ便ヲ借ルスラ船中ノ苦悶甚ダシキニ、小舟ニ乗ジテ軟弱ナル婦女子マデ海波ニタヾヨウテ四国、九州ノ果マデ至リシカヲ追思スレバ、如何ニ苦シカリケント思イテソゾロ憐ニ堪サリシ、况ンヤ陸ヨリ海ヨリ敵ニ追撃セラレ、今日モ昨日モ親キ友ヤ思愛ノ父母可憐ノ配偶ヲ失フ悲ミ、明日モ知ラレス露ノ命ヲ□ トスルニ止ムル歎ハ如何ナラント思ヒ来レバ、悲嘆ニ堪ザリキ。兵庫浦ノ海中ニ燈台アリ、是外船ノ沈没セル處ニ記念ノ為ニ立シナリト。明石ノ対岸ニ当リテ一島アリ、有名ノ淡路島山ナリ。山上樹多シ、松樹ナル如シ。淡路島ト明石ト突出スル處喉ノ如シ。茲ニ役場アリ、信号旗ヲ上下ス、外国船ナルカ日本船ナルカヲ問フナリ。兵庫ニ近接スレバ一官船アリ、信号シテ停止セヨト命ズ、即チ停止スレバ大声ヲ発シテ船名ヲ問フ、答フルニ薩摩丸ナルヲ以テスレバ、何處ヨリ来リシヲ問フ、鹿児島ト答フ、進ミテ神戸港ニ入ル。帆船汽船其ノ数ヲ知ラズ、大阪着船ハ午後五時頃ナラント言フヲ以テ、茲ヨリ上陸ス、荷物ト共十五銭ナリ。神戸市ヲ一週シテ晝飯ヲ食ス、梅花咲ク暖甚シ。花見遊山ノ人多シ、汽車ニ投ジテ大阪ニ入ル、各市ヲ回リテ眞綿ノ相場ヲ問