ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
明治三十二年二月二十三日鹿児島ニテ天晴朗各店ニ至リテ眞綿ノ相場ヲ問フ最優等百目弐円ヨリ下リテ壱円六十銭マデ。島糸ハアル家殆ドナシ、只一戸アリシノミ、價四円八十銭ナリ。長町、田町冷水入口百六十五□ 田戸指宿修后氏ノ紬製造ヲ聞ク。製造場ハ大ナラズ、場内女工数二十人ナリ。水車ヲ使用シテ車輪ヲ回轉セシメ、回力ヲ傅ヘテツムヲ回轉セシムナリ、ツムハ練リシ紬糸ヲ巻クノ用ヲナス、真綿掛盤ハ竹釘ヲ植へ其ノ釘ニ真綿ヲ掛ケ工女適宜ニ細大ナカラシムル様ニ糸ニ注意スルナリ。然ルトキハ車力ニテ糸ハ引カレテ前頭ノ針金ニ掛リ、其ヨリ二ツノ丸キ棒ノ間ヲ通シテツムニ至ルナリ。棒ノ下二水鉢ヲ置キテ棒ニ巻キタル布ハ濡テ其ノ濕ヲ細糸二傳テ濡サシムルナリ。ツムニ巻カルルマデニツムハ非常ノ回轉ヲナシテ縒リヲ送リテヨリ掛ルナリ。ツムヨリツカニ移シテ茲ニ力トナルナリ。此ノ製紬ハ百目三円三十五銭ニテ賣却スト言フ。マ綿ハ江州ヨリ仕入ルコトナルガ、壱円六十銭ヨリ八十銭マデナリト言フ。此ノ器械ニテハ一人二十目ヅヽ製ト言フ。優業工賃ハ十八銭自食ナリト言フ。場末ニ方ニ至ル、墓所アリ、花ヲ賣ル桜花ハ半開、梅ハ満開、椿水仙モ開キアリ。伊勢大神宮ノ分社アリ、梅花ノ下ニ学生運会ヲナシツツアリ。船津町ニハ機工場アリ、絹布ヲ織ル併ノ不完全ナル如シ、午后一時有益ナル城山ニ登ル、山高カラザレトモ非常ノ急峻ナリ、高サ五、六百尺、頂上モ山麓モ密生セル竹藪ナリ。其ノ間ヲ僅ニ蛇ノ通セシ跡ノ如キ細路アリ、細路ヲ径テ登リ頂上ニ達スル、半ヨリ以上ノ幹枯レシ樹多ク存ス、是レ砲撃ニ樹梢折レ或ハ枯レシナラン、山上ヨリナガムレバ鹿児島市眼下ニアリ、稠密ノ市街ハ金生町ノ辺ノミ、此ノ辺五、六町盛ナル市街ナリ、其ヨリ東方ハ廣ケレ共町ヲナスハ三、四通リアルノミ、人家ハ多ケレ共庭園ニ野菜