ブックタイトル塩川伊一郎評伝
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塩川伊一郎評伝
ハ宣しかるへし自ら冨豪者とならんに一攫千金の方法にあらすんばある可からすと余ハ君の説く所の願を遂ひ風を捕る類にして共に談するに足らすと思へり去れとも彼ハ余に森山村に来りて細民救済の演説を為し呉れと依頼せりかくて余ハ一日森山村に於て演説をする事となりぬ村民の大半ハ同夜集会セリその土地ハ到る処火山灰の推積より成り立たるモのにして果樹にハ適するも他の農産物にハ許多の肥料を施すにあらされハ多の収穫ハ得難かるへしと思へり余ハ偶然水蜜桃の事を思ひ出し且つ百合栽培ハ適するならんと思ひたれハ第一に桃樹を植付ケ三年間ハ間作として百合を培養することを説きたりしに伊一郎ハ拍手喝采セリ一場の演説ハ巳に畢りて聴衆の散して後八人の熱心家は其場所に残りて余と共に桃樹植付の利害得失を談す半信半疑の際伊一郎ハ立上りて『桃樹栽培にあらされハ今後の成功ハ期しかたし』と一々鋭意に他を奨励セリここに八人の者ハ同盟者を得ることヽなり壱人ニ付第一の払込を金拾円と為したりしか夫ハ随分六ヶ敷事の様に思ひたれば余ハ『諸君の桃樹栽培の為め拾円を奮発し得る哉』と問ひしに彼等ハどうしても金作して差出すといへり。かくて強固なる団体は出来たり甚た熱心になって善ハ急けと言ヘハ彼の同盟者八人ハ直に着手せん山林の木を伐したる跡を数町歩借受けて開墾し半ハ百合半ハシヤカイモを培養する事と為したり同盟ハ伊一郎田作をアンキョウと東京へ派遣して水蜜桃の苗木買入方を託せりかくて八人は引受け労働費ヲ以テ株金に偏入することとせりこれぞ森山へ桃樹栽培の初期なりき其後伊一郎君外七名の有志者ハ万難を凌き千苦を甞めたる結果