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概要

塩川伊一郎評伝

かもしれないと推測される。これらのことを考え併せると先の三資料から、桃、缶詰のことばを除いた内容、すなわち「缶詰でない苺ジャムに関しては、明治十四年に試作が行われ、また明治二十年頃には事業として製造が行なわれた」とするのが正しいのではないかと考えられる。さきの三資料は、明治三十年代の桃、缶詰製造の事実と混同した可能性があると考えられるのである。なお、『ジャムのはなし』などに、二代目伊一郎の幼名を勝助としているが、これは勝太の明らかな誤りであることも付け加えておきたい。社会事象について事実とちがった記録が残されている場合がよくある。人の記憶にはちがいがあるし、誇張して書かれた文には事実とはちがったことが書かれている場合がある。それは新しい資料が発見された時は書きかえられなければならないことは当然である。それ故、この本ではできるだけ多くの資料によって確めながらより正しい認識を得ようとつとめた。第三部には伊一郎関係資料の一部を載せたので読んでいただければ幸いである。