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概要

塩川伊一郎評伝

一桃栽培の利益と危険― 伊一郎の考えと木村熊二への感謝ー桃は、砂目が荒いやせた土地でも種類によっては育つことがわかった。桃は一反歩あたり約六○ 本を植えて肥料を施すことによって三年目から実をつけた。植えて五、六年目には一本から六、七貫目、七、八年たつと一○ 貫目以上の生桃を収穫することもできた。一貫目一六銭(缶詰工場買入れ相場) とすれば一円六○ 銭となり諸費用をひいても一株一円の利益となり、一反歩六〇円以上の収益が見込まれた。肥えた田んぼの米の収穫より、やせた畑の方がかえって収入が多いことが証明されることになったのである。しかし桃栽培には危険が伴っていた。伊一郎の経営する桃園からは一反歩一千貫以上の収穫が上がったが、ある農園では病害虫によって収穫が減り、かたい小さな果実しか採れないということもあった。多くの資本を投じて数年間努力しても失敗してしまうこともあった。それは土地に適した種類の選択と、栽培技術のちがいによって生じてくることは明らかであった。伊一郎は洋桃栽培に成功する方法として、① 信州の風土に適した良種② 姦商の甘言にのるな③ 果樹栽培の技術を学べ④ 成熟期が短いの