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概要

塩川伊一郎評伝

信濃佐久新聞社と東信新報社共催による大観桃会の予告介によって、洋桃缶詰とイチゴジャムを首相に贈った。昨年知事が本山北佐久郡長を通じて首相に伊一郎の洋桃缶詰を送っていたので、その時の味を覚えていた首相は、「この人が昨年軽井沢の別荘へ水蜜桃と缶詰を送ってくれた人か」と話しかけた。知事は伊一郎が浅間山麓の荒地を開拓して洋桃とイチゴの栽培に成功し、長野県下における園芸奨励の一端として注目している人物であることを首相に語った。小諸駅ホームでの短いひと時であった。三岡の桃栽培や缶詰とジャムは全国的に名声を得るようになった。桃園の一番美しい時は春の花の時期である。大正に入ると新聞や人々のうわさを聞いて、一三岡の桃を見にくる人が多くなった。明治の末頃から、佐久に鉄道を敷こうという動きが活発になってきた。大正三年五月、中込村で佐久鉄道の創立総会が開かれ、小諸駅から三岡・中佐都・岩村田を通って中込までの第一期線の工事がはじまった。信越線にそって東にのびた線路は、乙女で南に曲がって土橋駅(今の三岡駅)で停車、桃畑の間